こんにちは、やまエイト編集部のエイトです。
「熊鈴って、正直うるさくない?」——山でチリンチリンが何時間も続いて、そう感じたことがある人。逆に、自分の鈴の音が周りの迷惑になっていないか、気兼ねしながら歩いている人。この記事は、その両方に向けて書いています。
この「熊鈴うるさい問題」、SNSや登山の掲示板でも定期的に話題になります。そして毎回、「安全のためだから我慢しろ」派と「配慮がない」派で平行線になりがちです。
私は熊鈴を使う側です。それでも「うるさい」という感覚を否定する気はまったくありません。登山口の駐車場で準備している人の鈴や、山頂ではしゃいで写真を撮っている人の鈴が気になったことは、私にも何度もあります。それに、鈴の音で山を五感で感じられなくなるのは、正直ちょっと悲しい。使う側だからこそ、そう言えます。
先に結論からお伝えします。
結論【この記事の結論】
- うるさいと感じるのは自然。熊鈴は注意を引くための音
- それでも山では、音で人の存在を知らせるのが公的機関の推奨
- 答えは場面で切り替えること。山の中で消すのは、人のそばにいる短い間だけ。危ないと感じる区間では消さない
- 鳴らす側は音を選ぶ・先頭の1人だけ・すぐ消せる道具
- 聞かされる側は距離を取る。相手に悪気はない
この記事では、うるさいと言われる理由、それでも鳴らす理由、そして両方を成り立たせる切り替えとマナーを、順に書きます。
熊鈴が「うるさい」と言われる3つの理由

まず、うるさいと感じる側の言い分を並べます。これはクレームではなく、構造的にそうなる理由があります。
①音そのものが耳に刺さる
熊鈴の音は高くて、よく通ります。聞かされる側からすると、BGMのように聞き流せない音なんです。鳴らしている本人は慣れていても、周りの耳には一回一回刺さります。
音の感じ方には個人差もあります。同じ「チリーン」でも、心地よい鈴の音と感じる人もいれば、金属音として耳に刺さる人もいる。自分の基準で「これくらい平気でしょ」と考えるのが、いちばんすれ違いを生みます。
②とにかく長い
すれ違う車のクラクションは一瞬ですが、前を歩く人の熊鈴は、ペースが同じなら何十分も聞き続けることになります。休憩ポイントで隣に座った人の鈴も、その人が休んでいるあいだずっと鳴っています。
③人数分鳴る
人気の山では、前後左右から別々の鈴が別々のリズムで鳴ります。1個なら風情でも、いくつも重なると私には騒音に聞こえます。
この問題が最近よく聞かれるようになった背景もあります。クマの出没ニュースが増えて、熊鈴を持つ人そのものが増えた印象があります。一人ひとりは正しいことをしているのに、山全体の「音の総量」、それも自然の音ではない人工的な音が増えて、耳につく場面も増えた。そういう構造です。
要するに、熊鈴は「静かな山を楽しみたい」という登山の目的と、真正面からぶつかる性質を持った道具です。うるさいと感じる人は、わがままなのではなく普通の感覚だと思います。都会の喧騒から離れて、静かに山を楽しみたくて来ているのに、と思うのは当たり前です。
それでも山で鳴らすのが基本、とされる理由

一方で、鳴らす側にも明確な根拠があります。林野庁は山林で作業する人への注意として「鈴やラジオなど音の出るものを携帯し、人の存在を知らせる」ことを呼びかけています(出典:林野庁)。環境省のクマ対策資料も同じ考え方です。要するに、鳴らす側も安全に趣味の登山を満喫したいだけなんです。
クマの事故で多いのは、お互いに気づかないまま至近距離で出会ってしまう「ばったり遭遇」。クマは本来、人を避けて行動する動物とされていて、こちらの存在が先に伝われば、向こうから離れていくことが期待できます。音は、その「先に知らせる」ための手段です。
ちなみに林野庁の注意書きでは、音の携帯は「単独行動を避ける」とセットで書かれています。鈴だけで完結する話ではなく、複数の対策の組み合わせの一部——この位置づけを知っておくと、鈴への過信も過小評価もしなくなります。
つまり「うるさいから鳴らすな」を山の全域に適用してしまうと、安全の根拠ごと捨てることになります。ここが、街の騒音問題と同じ物差しでは扱えないところです。
ただ、ひとつ。
公的機関の文書を読むかぎり、求められているのは「クマのいる環境で音を出すこと」で、「山に入ったら下山まで一秒も止めるな」ではないと私は受け取っています。ここを取り違えると、鳴らす側と聞く側の両方が不幸になります。
もうひとつ、ここでいう音は遭遇する前に知らせるためのものです。クマを見つけてからでは、鈴や大声で追い払うことはできません。見つけたあとの動きは、熊鈴はどこにつける?の記事の遭遇の章に書いています。下のカードからどうぞ。私自身は、クマの出る時期はクマスプレーも必ず携帯しています。鈴は会わないための備え、スプレーは会ってしまったときの備えです。

「うるさい」と「安全」は、切り替えで両立できる

私の考えはシンプルで、熊鈴は「場面でオンオフする道具」です。
鳴らす場面
・見通しの悪い樹林帯・笹やぶ・曲がり角
・沢沿いや風の強い日(音がかき消されやすいので、声や手拍子も足す)
・朝夕や、人の少ないルート
消す場面
・電車やバスの車内、店や施設の中
・人とすれ違う数歩のあいだ、休憩している人のすぐそばにいるあいだ
・前後に人が続いて、自分の鈴が誰かのすぐ後ろで鳴り続けてしまう区間(ただし危ないと感じる区間なら消さない)
・山小屋の屋内
注意点がひとつ。「人が多いから安全」とは限りません。近年は人の多い山域での出没も報告されています。人の数ではなく、現地の注意書きや出没情報で判断してください。見通しの悪い樹林帯や、クマ注意の看板が立っている区間のように「ここは危ない」と感じる場所では、周りに人がいても私は消しません。相手もそういう場所では消さないものです。
ただし、注意書きや出没情報は「鈴を鳴らせば進める」という意味ではありません。出没の日時や場所、規制を見て、ルートを変える、引き返す、その日はやめる、という判断が先です。そのうえで登るなら鳴らす。順番はこれです。私も基本的に、直近で出没情報が出た山には安全面を考慮して登りません。
出没情報は、自治体のサイトや登山口の案内板、ビジターセンターで確認できます。登る前にサッと見る習慣をつけると、「鳴らすべき山かどうか」の判断が具体的になります。
逆に言えば、全員が場面で切り替えるだけで、山に響く鈴の音はずっと少なくなります。安全を削らずに静けさを取り戻す方法は、これしかないと思っています。
私の1日で書くと、こうなります。車ではザックに付けたまま消音。歩き出す前に解除。樹林帯は鳴らす。人とすれ違うときは数歩手前で上部を回して止めて、通り過ぎたら戻す。休憩でザックを下ろす前に消して、歩き出す前に戻す。下山して車に乗り込む前に消す。数えてはいませんが、消音のオンオフは1日に3〜4回くらいです。迷ったら、必ず安全を第一に鳴らしておきます。
どこにつければよく鳴るか、具体的な消音のやり方は、それぞれ別の記事に詳しくまとめていますので、よければ参考にしてみてください。
▼つける位置の正解と、鳴らさないマナーの詳細はこちら

▼自作の消音ワザから消音機能付きの選び方まではこちら

鳴らす側のマナーは「音を選ぶ・数を絞る・すぐ消せる」
▲私が使っている消音機能付きの熊鈴です
鳴らす側ができることは、実はそれほど多くありません。音量を細かく調整できるわけでもないし、鳴る場所を選べるわけでもない。できるのは、どの鈴を選ぶか、何個鳴らすか、そしていつ止めるか。うるさいと言われない鳴らし方は、この3つに集約されます。
①自分が聞いて心地いい音を選ぶ
熊鈴の音色は製品でかなり違います。半日聞き続けるのは、誰よりも自分です。買うときに「この音を何時間聞けるか」で選ぶと、少なくとも自分がうんざりして雑に扱うことは減ります。
②グループなら先頭の1人だけ
私は基本一人で登りますが、何人かで登るときは先頭の人だけがつけています。会話そのものが人の気配になりますし、鈴の数が増えるほど、周囲の音も仲間の声も聞こえにくくなるからです。ただしこれは、間隔を詰めて歩く少人数の話です。隊列が長い、間隔が空く、という場合は最後尾にもあったほうがいいと思います。
③「すぐ消せる」道具を持つ
これがいちばん効きます。私は消音機能のない鈴を使っていた頃、すれ違うたびに指を鈴の中に突っ込んで止めていました。混雑した日は消音を維持するためにずっと片手が塞がった状態で、正直しんどかった。マナーの意識があっても、消すのに手間がかかる道具だと、だんだん消さなくなります。私が使っているのは、上部を回すだけで消音できるハイマウントの「マジックベアベル」。すれ違う数歩手前で回して止めて、通り過ぎたらまた回して戻す、で済んでいます。
細かい話をひとつ足すと、休憩でザックを下ろすときも鈴は鳴ります。ザックを雑に置くたびにガチャンと鳴るのは、静かな休憩ポイントでは意外と目立つもの。私は消音してから下ろすので、鈴が地面に当たって鳴ることはありません。
私の運用も書いておくと、鈴はザックの肩ベルトのDカンに1個。予備は持っていません。樹林帯では鳴らして、人とすれ違うときは上部を回して消す。舗装路でも人がいなければ鳴らしたままです。車移動が多いので、行きも帰りも消音したまま付けっぱなしです。特別なことは何もしていません。それでも鈴の音まわりで嫌な思いをしたことがないかというと、それは次の章で書きます。
音そのものへの気配りと、切り替えの手軽さ。この2つが揃うと、熊鈴は「うるさい道具」から「ちゃんとした登山者の道具」に変わります。
聞かされる側になったら:うるさいと感じた日の考え方

ここからは、鳴らす側ではなく、聞かされる側になったときの話です。
私にもあります。下山で混雑していて、後ろの人の鈴がずっと鳴っている。相手に悪気はまったくないし、悪いことをしているわけでもない。それでも、車のクラクションというか煽り運転というか、急かされているような気持ちになったことがあります。これは私の気持ちの問題です。そのときは「この鈴は私のためにも鳴っているんだ」と、半分自分に言い聞かせて歩きました。
実際、熊鈴が知らせる「人がいますよ」という情報は、その場にいる全員を含みます。見通しの悪い樹林帯なら、前を歩く人の鈴に、こちらも守られている面があるわけです。ただ、急かされたように感じる人がいることは、鳴らす側として知っておいて損はないと思います。まぁ私が普段から車に乗っていて、普通の人以上にそういう感覚になりやすかっただけかもしれませんがね(苦笑)。
そのうえで、私がやっている現実的な対処はこの2つです。
①距離を調整する
休憩を1本入れて間隔を空けるだけで、音はほとんど気にならなくなります。
正直に書くと、私も他人の鈴が鳴っていない静かなところを歩きたくて、人の少ない時間帯やルートを選ぶときもあります。もちろん自分の鈴はつけたままです。ただ、これは鈴対策として人に勧められる方法ではありません。人が少ない山はクマにとっても静かな山です。私自身いつも以上に周りを警戒して登っていますし、出没情報が出ていればそもそも行きません。うるさい鈴から離れたいだけなら、休憩を1本入れて間隔を空けるほうがずっと安全です。
ひとつだけやめておきたいのは、イヤホンで耳を塞いでしまうこと。イヤホンで歩いている人を見かけることはありますが、私はしません。鈴の音は消えますが、落石や自転車、動物の気配といった安全に関わる音まで消えます。山では耳は大事なセンサーなので、耳を塞ぐやり方はおすすめしません。
②消し忘れているだけの人は、そっとしておく
山頂や小屋で鳴りっぱなしの鈴は、本人が消し忘れているだけのことがほとんどです。イライラするより「消し方を知らないんだな」くらいに流すのが、山の空気を守る大人の振る舞いだと思います。あくまでマナーの問題なので、危険なことや安全に欠ける行動をしている人には声をかけますが、それ以外のことでは、私はあまり声をかけないようにしています。
直接注意するのは、正直おすすめしません。私も、休憩中に明らかに初心者らしい人の鈴が鳴りっぱなしだったとき、言いませんでした。嫌な気持ちにさせて登山を嫌いになってほしくなかったし、私も初心者の頃は迷惑をかけていたと思うからです。それに昔、些細なことで声をかけて舌打ちされたことがあって、相手も自分も嫌な気持ちになりました。それ以来、こちらから率先して声をかけることはしなくなりました。話しかけられたら、そのときはちゃんと言っています。
マナーの話は、言い方ひとつでただの喧嘩になります。自分ではできませんが、ビシッと注意できる人は正直すごいと思っています。こういう考え方が広まって、お互いさまの空気ができるのが理想です。
熊鈴のうるささでよくある質問

「熊鈴は効果がないからうるさいだけ」という意見を見ました
「音に慣れたクマには効きにくいのでは」という議論は実際にあります。ただ、公的機関が音の出るものの携帯を推奨し続けているのも事実です。私はこう考えています。万能ではないけれど、ばったり遭遇を減らせる可能性があるなら、つけない理由はない。効果の議論を理由に丸腰になるより、鈴と声と出没情報チェックを重ねておくほうがいいと思っています。
自分の熊鈴の音が、だんだんうるさく感じてきました
それは買い替えのサインかもしれません。鈴の音色は製品でまったく違い、半日聞いても疲れない音とそうでない音があります。乾いた高音が苦手なら低く響くカウベル型、といった具合に、店頭で振り比べて「自分の耳が許せる音」を探すのがおすすめです。自分が心地よく鳴らせる鈴は、結果的に周りへの圧も下がります。
テント場で夜も鳴っているのが気になります
混雑したテント場では、テントの周りでは消す(外す)のがマナーです。ただ、夜に鳴っている鈴の中には、テントの入り口にわざと吊るして、動物が近づいたときに気づくためのセンサー代わりにしているものもあります。私もキャンプ場で夜に鳴り続けている鈴を聞いたことがありますが、正直「しゃーなし」だと思っていました。施設によって扱いが違うので、案内があればそれに従ってください。
ラジオや音楽を流すのとどちらがいいですか?
林野庁の注意書きでは、鈴と並んでラジオも「音の出るもの」として挙げられています。ただ、ラジオや音楽は音が連続する分、周囲の人への圧が強めです。それに、鳴らし続けるとスマホの電池が減ります。電池が切れれば地図アプリも使えなくなるので、山ではこれが痛いです。人のいる山域では、止めたいときにすぐ止められる熊鈴のほうが、マナーとの両立はしやすいと感じます。
音が控えめな熊鈴を選べば解決しませんか?
半分は正解です。ただ、音が控えめということは届く範囲も狭いということで、存在を知らせるという本来の仕事は弱くなります。音量を絞ってマナーに寄せるより、しっかり鳴る鈴を「場面で消せる」ようにするほうが、安全とマナーの両方を取れる考え方だと思います。
クマがいない地域や、シーズン外でも鳴らしたほうがいい?
生息していない地域、たとえば九州の山では、鳴らす意味がありません。そこで鳴らし続けるのは、ただの騒音です。逆に生息地域では、出没情報がないのは「まだ見つかっていないだけ」かもしれないので、シーズン中は必ずつけます。シーズン外は本来つける意味が薄いのですが、最近は冬でも出没する例があるので、過信は禁物です。念のため持っていくくらいがちょうどいいと思っています。「この山にはいない」を自分の記憶で決めずに、地域の最新の情報で確認してください。
子どもに熊鈴を持たせるのはあり?
おすすめです。大人から離れて歩きがちな子ほど持たせる意味がありますし、もしはぐれても音で見つけやすくなる可能性があります。数を減らすことより、人のそばで消す判断を大人がしてあげることのほうが大事です。
早朝の登山口や、ふもとの集落では鳴らしていい?
住宅や畑のそばでは、音への配慮は要ります。ただ、登山口や集落がクマの生息域と切れているわけではありません。地域に出没情報が出ているなら、私はその山を選び直します。出ていなくても、見通しの悪い区間に入ったら鳴らすのは変わりません。生活の場への配慮と、クマへの備えは、どちらかを選ぶ話ではありません。自分の安全を第一に考えたうえで、配慮できるところは配慮する、です。
熊鈴とそれ以外の鈴で、うるささは違いますか?
違います。熊鈴は遠くまで届くように作られた音なので、装飾用の小さな鈴より存在感は大きいです。そのぶん「消せること」の価値も大きくなります。熊鈴と普通の鈴の違いはこちらの記事にまとめています。下のカードからどうぞ。

まとめ:うるさいかどうかは使い方で決まる。消音機能付きの鈴はそれを楽にする
まとめ【熊鈴のうるささとマナーのまとめ】
- うるさいと感じるのは自然な感覚。熊鈴は注意を引くための音で、山を五感で感じたい人ほど気になる
- それでも山では音で存在を知らせるのが公的機関の推奨。ただし音は遭遇する前の話で、見つけたあとに鳴らしても追い払えない
- 答えは場面で切り替えること。山の中で消すのは、人のそばにいる短い間だけ。危ないと感じる区間では人が多くても消さない。出没情報が出た山にはそもそも登らない
- 鳴らす側のマナーは音を選ぶ・先頭の1人だけ・すぐ消せる道具。私はDカンに付けて、車では付けたまま消音
- 聞かされる側は距離を取る。急かされているように感じても、相手に悪気はない。直接の注意はしない
山の静けさが好きな人と、山の安全を大事にする人は、対立していません。たいていの場合、同じ人です。
熊鈴は、鳴らす人と聞く人が同じ山を共有する道具。うるさいという声を「わかってないな」で片付けず、鳴らす側が切り替え上手になる。聞かされる側も、相手に悪気はないと思えるようになる。それがいちばん建設的な着地点だと、私は思っています。
▼切り替え上手になれる、私が使っている熊鈴はこちら
Enjoy the mountains!


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