こんにちは、やまエイト編集部のエイトです。
登山の飲み物、何を持っていけばいいのか。入れ物は水筒かペットボトルか、中身は水かスポーツドリンクかお茶か、そして何mL持てば足りるのか。迷いどころは、この3つに分かれます。
私の答えは、麦茶をペットボトルで、ザックのサイドポケットに。昔は水筒を使っていましたが、歩きながら飲むのが面倒で乗り換えました。それとは別に、予備の水を500mL、こちらは水筒に入れてザックの中に。
量については、山ごとに「残った量」と「帰宅時の疲れ具合」を記録して、自分なりの基準を作っています。
先に結論からお伝えします。
結論【この記事の結論】
- 飲み物は自宅で沸かした麦茶。理由は家でいつも作っていて飲み慣れているから
- 麦茶の塩分はほぼゼロ。大量に汗をかく日は塩タブレットなどで塩分を別に補う
- 容器はペットボトル。水筒は飲むのにワンテンポかかったうえ、広口でこぼしやすかった
- 量は目安式(体重×行動時間×5mL×0.7〜0.8)で当たりをつけ、山ごとの記録で調整
- 私の量は夏が合計2L(水筒の水500mL+麦茶のペットボトル2本+アミノバイタル1本)、冬が合計1.5L(麦茶のペットボトル1本+温かい麦茶の保温ボトル+水500mL)
- 予備の水500mLは水筒に入れてザックの中。飲む麦茶はサイドポケット
この記事では、麦茶を選ぶ理由とその限界、水筒からペットボトルに乗り換えた理由、夏の凍らせ麦茶の運用、持っていく水の量の決め方、飲みかけボトルの注意点までを一通りまとめます。
登山の飲み物に、私が麦茶を選び続けている理由

私の登山の飲み物は、もう長いこと麦茶です。いちばんの理由は、飲み慣れていること。普段から家で作っている麦茶なので、山のために何かを用意する必要がありません。もうひとつ、スポーツドリンクは甘くて苦手なこと。甘くない麦茶なら、行動中でも喉に素直に入っていきます。
水でもいいのでは、と思われるかもしれません。私も水を否定はしませんし、実際に予備として必ず水を持っていっています。ただ、喉が渇く前からこまめに飲むのが大事な登山で、水は良くも悪くも無味無臭。私は後半になると飲み飽きてくることがよくあって、それで麦茶に変えました。ほんのり香ばしい味がついているほうが、最後まで手が伸びます。
麦茶が登山向きと言われる理由(ノンカフェイン・無糖)
麦茶が登山の飲み物として勧められる理由は、大きく3つに整理できます。
①カフェインを含まない:カフェインには利尿作用があるので、せっかく飲んだ水分が出ていきやすくなります。麦茶にはそれがありません。
②ミネラルを含む:少量ですが、カリウムなどのミネラルが含まれています。
③砂糖が入っていない:甘さで喉が渇く感じがなく、糖分の摂りすぎも気にしなくて済みます。
私も一度調べてみたのですが、緑茶やコーヒーにはカフェインが入っているので、水分補給の主役にするには向かない。その点、麦茶はカフェインフリーで、ミネラルも入っている。これが麦茶のいいところのようです。ただしそのミネラルは、塩分補給になる量ではありません。ここは次の節で書きます。
ちなみに、カフェインが入っているからコーヒーを飲まない、というわけではありません。私自身、コーヒーは大好きで低山では休憩がてら淹れるほどですが、歩いている間に飲むのは麦茶です。喉の渇きを満たす飲み物と、休憩で楽しむ一杯は役割が違うと思っているからです。
麦茶だけでは足りないもの——塩分と糖分は別に持つ
麦茶は塩分補給にはなりません。
文部科学省の日本食品標準成分表(八訂)増補2023年では、麦茶の浸出液100gあたりのナトリウムは1mg、カリウムは6mg。ミネラルが「含まれている」のは事実ですが、汗で失った電解質を補える量ではなく、成分としては水に近いと考えたほうが実態に合います。
一方で環境省の「熱中症環境保健マニュアル」は、大量に汗をかく場面では水だけでなく、塩分濃度0.1〜0.2%程度の水分(スポーツ飲料など)を摂るよう勧めています。水1Lに食塩1〜2gを加えた濃さです。
ここは、麦茶派の私がいちばん気をつけているところです。同じマニュアルでは、長時間の運動では塩分を摂るとともに水を過剰に摂取しないようにとも書いています。塩分の入っていない飲み物を大量に飲み続けると、体内の塩分が薄まってしまい、頭痛や吐き気、ひどい場合はけいれんや意識障害(低ナトリウム血症)につながるからです。飲み物に麦茶を選ぶなら、塩分を別に用意することとセットだと考えてください。
私の場合は、夏の行動食に塩タブレットを加えるようになりました。タブレットは食べやすく、1粒の塩分量が決まっているのでどれだけ摂ったかを把握しやすいのが利点です。糖質も行動食から補っています。食塩相当量は商品ごとに違うので、暑い日に長く歩くなら表示を一度見ておくと量を決めやすくなります。行動食の中身(定番5つと、やめた2つ)は登山の行動食の記事にまとめています。

暑い日にスポーツドリンクへ切り替えるかどうかは、麦茶派なら一度は迷うところだと思います。私はスポーツドリンク特有の甘さ(砂糖や果糖ぶどう糖液糖に、製品によっては人工甘味料も入っています)が苦手なので、ほぼ持っていきません。
基本は麦茶で、夏は塩タブレットを足し、アミノバイタルを溶かした物も1本持ちます。使っているのは粉末の「アミノバイタル クエン酸チャージ ウォーター」で、1袋を500mLの水に溶かして毎回自作しています。私の感覚では甘さが市販のスポーツドリンクより控えめで、後味がすっきりしているので、こちらは抵抗なく飲めます。あとから成分を見て気づいたのですが、1本(500mL)で食塩相当量0.7g=塩分濃度0.14%。環境省が勧める0.1〜0.2%にちょうど入るので、麦茶の弱点を補う1本としては理にかなっていました(味の素公式の栄養成分表示より)。そして酷暑の予報が出ている日だけ、経口補水液を念のため持っていきます。足すのではなく、アミノバイタルの1本を経口補水液に替える形で、総量は増やしません。予備の水筒の水は緊急用も兼ねているので、減らすことはありませんし、常に携帯しています。
▼私が毎回自作している、粉末のアミノバイタル クエン酸チャージ ウォーターはこちら
麦茶は自宅で沸かしています
私の麦茶は、市販のペットボトル飲料ではなく自宅で沸かしたものです。山のために特別に作っているわけではなく、家でいつも沸かしている麦茶をそのまま持っていくだけ。容器は、コンビニで売っている冷凍専用のペットボトルの空き容器を洗って使っています。凍らせ方は後の章で書きます。
作り方は、大きな鍋で湯を沸かして、ボトルにお湯と麦茶パックを入れて5分ほど浸し、パックを取り出すだけ。鍋には湯が余るので、それを冷まして自作のハッカ油スプレーの水に使ったりもしています。ハッカ油スプレーは、登山中の虫除けとして吹き足し用に使っている物で、麦茶と同じように家で簡単に作れます。レシピは、こちらの記事で詳しく書いています。下のカードからどうぞ。

水筒からペットボトルに乗り換えた理由

以前は私も水筒派でした。乗り換えた理由は、飲むのにワンテンポかかることと、歩きながらだとこぼしやすかったことです。
当時使っていたのは、保温タイプのステンレス水筒です。フタを開けて、飲んで、閉めて、しまう。この一連の動作が、歩きながらだと私には面倒でした。面倒だと飲む回数が減ります。もうひとつ、その水筒は口が広くて(洗いやすいようにだと思います)、歩きながら飲むと一気に出てきてこぼすことがしょっちゅうありました。水筒そのものが悪いのではなく、私の飲み方に合っていなかったのだと思います。
ペットボトルはキャップをひねるだけ。口が狭いので飲んでいる最中にこぼれにくく、私にはこちらのほうが手が伸びやすくて、歩きながらでも飲みやすくなりました。ただし、飲むために足元から目を離すのは別の話です。足場の悪い道や狭い稜線では、広くて安全なところまで進んでから飲むようにしています。
水筒を完全にやめたわけではありません。歩きながら飲む麦茶はペットボトルに移しましたが、予備の水500mLは今も水筒に入れています。こちらは歩きながら飲む物ではないので、ワンテンポかかっても困らないからです。
飲む麦茶はサイドポケット、予備の水は水筒でザックの中

行動中に飲む麦茶の置き場所は、ザックのサイドポケットと決めています。ザックの中に入れると、飲むたびに下ろす必要があり、結局「面倒だから後で」になってしまうからです。麦茶を水筒からペットボトルに移した理由と同じ構図ですね。
ただし、飲み物をすべてサイドポケットに集めているわけではありません。予備の水500mLは水筒に入れて、ザックの中の背中側・上寄りに入れています。歩きながら飲むためではなく、麦茶が足りなくなったときの保険です。それに真水は、転んだときの傷口を洗う・火照った体を冷やす・薬を飲むなど、麦茶にはできない使い方ができる「何にでも使える水」でもあります。重い物を背中側の上に置くと、荷物が体に近いところでまとまって重心が安定し、背負っていて楽です。
ここで効いてくるのがザックの作りです。私が愛用しているミレー サースフェー NX 30+5は、サイドポケットが下からも取り出せる形になっていて、背負ったまま手を後ろに回してスッとボトルが取れます。サイドポケットのほかにも、肩ベルトの折りたたみ式ポケットや腰ベルトの大型ポケットにボトルが入るので、人によって取り出しやすい場所を選べるのもこのザックのいいところです。サイドポケットの取り出しやすさはザック選びで見落とされがちですが、ペットボトル派の人には大事な項目です。店頭で試す機会があれば、背負った状態で後ろに手を回してみてください。
▼サイドポケットが下からも取り出せる、私のザックはこちら
ペットボトル・水筒・ソフトボトルの比較
飲み物の容器は、大きく3タイプに分かれます。私の使い方を基準に比べた表がこちらです。
| 項目 | ペットボトル | 水筒(真空断熱ボトル) | ソフトボトル・ハイドレーション |
|---|---|---|---|
| 容器の重さ | 軽い(500mLで20〜30g前後) | 重い(500mLで200〜300g前後) | 軽い |
| 歩きながら飲む | キャップをひねるだけ。口が狭くこぼれにくい | フタの構造しだい(私の旧水筒は開閉に手間があり、広口でこぼしやすかった) | ホース付きなら最も楽 |
| 保温・保冷 | なし(保冷カバーで補う) | 強い | なし |
| 残量の確認 | 見れば分かる | 振って確かめる | ザックの中に入れると見えにくい |
| 手入れ | 詰め替えて使うなら毎回洗って乾かす(傷やへこみが出たら交換) | 毎回洗う | ホース付きは内部の洗浄と乾燥が手間 |
| 費用 | 市販品を買う価格のみ | 2,000〜5,000円台 | 3,000〜6,000円台 |
| 向く場面 | 日帰り全般・軽さと手軽さを取る人 | 冬に温かい物を飲みたい日 | ホース給水で飲み続けたい人 |
※重さ・価格は一般的な製品の目安です。製品によって差があります。
ちなみに私のサースフェーはハイドレーション対応ですが、ハイドレーションは使っていません。歩きながら飲む楽さでは上だと分かっていて、それでもペットボトルを選んでいるのは、手入れの面倒が増えることと、残量が見えないことが大きいからです。この話は、別の記事でじっくり書きます。
保温・保冷を重視するなら水筒が便利です。真冬に温かいお茶を飲みたい日、炎天下で最後の一口まで冷たいままにしたい日は、水筒に分があります。私も冬は、麦茶のペットボトルを1本減らして、代わりに保温ボトルに温かい麦茶を入れて、サイドポケットに差して持っていきます。それでも麦茶を水筒からペットボトルに移したのは、その長所より「歩きながら、こぼさずに飲める」ことの価値が、自分の登り方では大きかったからです。
ペットボトルの弱点は保温も保冷もできないことで、夏は中身がすぐぬるくなります。この弱点をどう埋めているかを、次の章で書きます。
夏は凍らせた麦茶と、保冷ペットボトルカバーで

夏の私の定番は、凍らせた麦茶を保冷タイプのペットボトルカバーに入れて、サイドポケットに差しておく形です。
凍らせた麦茶をそのままサイドポケットに入れると、結露でポケットの生地が濡れ、ザック本体の側面まで湿ってきます。保冷カバーをかぶせると、この結露で周りが濡れるのを抑えられるうえに、氷も長持ちする。ひとつで2つの困りごとが片づくので、夏はカバー込みで1セットという扱いです。カバーの厚みのぶん、サイドポケットには少し入れづらくなりますが、ちゃんと入るので問題ありません。
氷が長持ちする意味は、単に冷たいだけではありません。真夏の低山は、日陰の少ない登りで飲み物がぬるま湯になります。ぬるい麦茶は飲む気が起きず、飲む回数が落ちる。冷たさは、こまめな給水を続ける後押しになります。
凍らせるのは基本2本です。ただし、1本をまるごと凍らせることはしません。6〜7割だけ入れて凍らせておき、当日に冷ましてある麦茶を注ぎ足す。こうすると最初の1本目から飲めますし、中の氷が溶けるあいだ冷たさが続きます。ここは意外と大事で、最近の保冷カバーは性能がいいので、まるごと凍らせた1本をカバーに入れておくと、飲みたいときに溶けきっていなくて飲めない、ということが起こりえます。カチカチの1本を抱えて「最初の1時間なにも飲めない」という事態は、6〜7割にしておけば避けられます。
ペットボトルを凍らせるときの注意
飲料メーカーの注意事項も確認しておきます。伊藤園のお客様相談室は、缶やペットボトル飲料の冷凍保存について「冷凍保存しないようお願いします」と明言しています。凍ると中身が膨張し、容器に負荷がかかって破損することがあるためで、凍らせたいなら冷凍兼用ボトルの商品を使ってほしい、という立場です。
その冷凍兼用ボトルを家庭で凍らせる場合の注意点も、同じ相談室が3つ挙げています。
①事前に冷蔵庫で冷やしてから冷凍庫へ
②ボトルを立てた状態で凍らせる(横倒しは容器が破損する恐れがある)
③冷気の吹き出し口から離して置く
別の項目では、一度解凍したものを再冷凍しないことも案内されています。
ここで、私の運用を書いておきます。私が凍らせているのは、コンビニで買った冷凍専用ペットボトルの空き容器、つまり、もともと凍らせる前提で作られている容器です。立てて凍らせるのは先ほどの注意点のとおりで、6〜7割だけ入れるのは、メーカーの手順ではなく私の運用です。
それでも、使い捨てとして売られている容器を洗って使い回すのは、メーカーが勧めている使い方ではありません。私は自己責任でやっていますが、同じことをするなら、傷やへこみが出たボトルは早めに替えてください。小さな亀裂が入っていても、凍らせている間は漏れに気づきません。山で溶けてから漏れ出すと、ザックや服が濡れるだけでなく、持ってきた飲み物が足りなくなります。凍らせる前に必ず容器をチェックしてください。
安全側の選択肢もはっきりしています。冷凍兼用ボトルの商品を買ってその容器をそのまま使うか、繰り返し使える冷凍対応ボトルを取扱説明書どおりに使うか。どちらかにすれば、製品の表示や説明書を根拠に凍らせられます。
なお、冷凍に対応した容器を自分で凍らせる場合は、満タンにしないで膨らむ分の余裕を残すことと、立てて凍らせることが基本です。炭酸飲料は膨張が大きく破損しやすいので、凍らせないでください。
凍らせるペットボトルは、何でもいいわけではない
「ペットボトルなら何でも凍らせていいの?」という疑問にも答えておきます。答えは、何でもいいわけではありません。
ペットボトルにもいろいろあります。お茶や水が入っている柔らかめのボトル、炭酸飲料用の硬くて底が5つ脚になっているボトル、そして冷凍兼用(冷凍対応)のボトル。伊藤園は冷凍対応の商品について、「冷凍時に起こる内容液の膨張などをあらかじめ計算した専用の冷凍対応容器」を採用していると説明しています。店頭で見比べると、胴にらせん状の凹凸やリブが入っていたり、ラベルに「冷凍兼用」「凍らせてもおいしい」と書いてあったりするので、見分けはつきます。
普通のお茶や水のボトルでも、凍らせて無事なことはあるかもしれません。ただ、膨張を前提に作られているのは冷凍兼用のボトルだけです。凍らせるなら、最初から冷凍兼用のボトルを選ぶのが安心で、私がコンビニの冷凍専用ボトルの空き容器を使っているのもそのためです。
もうひとつ。コンビニで売っている凍ったままのボトルは、買ってそのまま持っていけるので便利ですが、まるごと凍っているので1本目には向きません。最初に飲む1本は、凍っていない物か、6〜7割だけ凍らせて注ぎ足した物にしてください。
▼最初から凍らせる前提で作られた、伊藤園の冷凍兼用ボトルの麦茶はこちら
保冷ペットボトルカバーは「サイドポケットに入る太さ」で選ぶ
保冷ペットボトルカバーは100均からアウトドアブランドまで幅広くありますが、登山で使うなら見るべき点は3つです。
①500〜600mLのボトルが入るサイズ:大きすぎると中で動いて、ポケットへの収まりも悪くなります。
②カバーごとサイドポケットに収まる太さ:分厚い保冷材のカバーはポケットに入らないことがあります。
③片手で出し入れできる口の形:ファスナーを全部開けないと飲めないタイプは、水筒より手間がかかってしまうのでNGです。
買う前に、手持ちのザックのサイドポケットの深さと幅、使っているボトルの太さ(直径)を測っておくと失敗しません。ちなみに私が使っているのは100均のカバーで、商品名は正直、分かりません(笑)。ボトルを差したままキャップをひねって飲めるタイプです。100均の物なのですが性能はかなり良くて、ずっと冷たいままとはいきませんが、ある程度は保冷が続きます。そして私の場合、凍らせた麦茶は溶けてくれないと飲めないので、保冷しすぎないくらいが逆にちょうどいいんですよね。結露を抑えて氷を長持ちさせる役目は、高い物でなくても十分に効果を発揮してくれています。
持っていく水の量はどう決めるか|目安式と私の記録

水の量は、目安式で行動中に飲む分の当たりをつけるのが一般的な考え方です。私はそこに自分の記録を重ねて、山ごとに決めています。
目安式:脱水量=体重×行動時間×5mL
登山で失う水分の目安として広く使われているのが、次の式です。ファイントラックの解説によれば、日本山岳ガイド協会で使われている計算式とのこと。
脱水量(mL)=体重(kg)×行動時間(h)×5
パッと見は数学の公式みたいで受け付けない人もいるかもしれませんが、安心してください。とても簡単です(笑)。要するに、自分の体重に歩く時間をかけて、それを5倍にした数字が、登山中に失う水分の量です。
そして、実際に飲む量(給水量)は脱水量の0.7〜0.8倍が目安とされています。残りは下山後の食事などで戻す、という考え方です。たとえば体重60kgの人が5時間歩くなら、60×5×5=1,500mLが脱水量で、その0.7〜0.8倍の1,050〜1,200mLが行動中に飲む量の目安になります。
体重と行動時間ごとの給水量の目安(脱水量×0.7〜0.8)を、式のとおりに計算したのが次の表です。
※この表は一定の条件で計算した行動中に飲む量の例で、持っていく量そのものではありません。実際の携行量は、ここに補給地点の有無と予備を足して決めます。
| 体重\行動時間 | 4時間 | 6時間 | 8時間 |
|---|---|---|---|
| 50kg | 700〜800mL | 1,050〜1,200mL | 1,400〜1,600mL |
| 60kg | 840〜960mL | 1,260〜1,440mL | 1,680〜1,920mL |
| 70kg | 980〜1,120mL | 1,470〜1,680mL | 1,960〜2,240mL |
※脱水量=体重×行動時間×5mL、給水量=脱水量×0.7〜0.8で機械的に計算した数値。気温・汗のかき方で上下します。
500mLのペットボトルに置き換えると、体重60kgで6時間なら行動中の給水は3本ぶんが計算上の目安です。ここに予備の水を足し、暑い日や汗をかきやすい人はさらに上乗せする、という順番で考えます。体重60kgで6時間なら、行動中の1.3〜1.4Lに予備500mLを足して約2L=500mLのボトル4本が出発点、と覚えておくと決めやすいです。
係数の5は、標準的な条件の数字です。ファイントラックの解説では、山本正嘉教授の研究として「自重(体重+ザック)×5×行動時間」とザックの重さを加える式も紹介されていました。夏の暑い日や汗っかきの人は多めに、寒い時期は少なめにと、自分の体で補正する前提の式だと考えてください。
もうひとつ、式より先に確認したいのがその山に水場や山小屋があるかです。途中で確実に補給できるなら持つ量を減らせますし、枯れることがある水場は当てにできません。地図やコース情報で補給地点を確かめてから、足りない分を背負う。この順番にすると、水の重さで消耗する日が減ります。
私は山ごとに残った量と疲れ具合を記録しています

目安式は出発点として便利ですが、最後は自分のデータが頼りです。私は残った飲料量と帰宅時の疲労感を山ごとに記録しています。
記録しているのは4項目です。
①山の標高
②その日の体調(◯△で)
③残った飲料量(◯△×で)
④帰宅時の疲労感(◯△×で)
これを山ごとに記録しておいて、次に同じ山、あるいは似た標高の山に行くときに量を調整します。
記録を続けて出てきた私の目安が、「ちょうどなくなるより、少し多め」です。ぴったり飲み切る量は、気温が高かった日や、体調があまり優れない(△の)日には「足りなかった日」に変わるからです。
同じ山でも、季節によって必要な量が変わるのは実感しています。私の場合、夏と冬では持っていく量が0.5〜1L違います(内訳は次の節で)。目安式には出てこない「その山の癖」は、記録を重ねないと見えてきません。
読者の方が同じことをやるなら、項目はもう少し多いほうが使いやすいと思います。
①持っていった量
②現地で補給した量(補給した場合は)
③残った量
④行動時間
⑤その日の暑さ
⑥体調
この6つを書いておけば、次の山で何mL持てばいいかを自分の数字で決められます。
余った日の扱いは、単純に「持ちすぎ」と決めないようにしています。暑さ、行動時間の短縮、飲み忘れなど、余る理由はいくつもあるからです。余った量と、その日の条件をセットで見る。私は余った理由が分かるときは、備考に簡単に理由を書いておくようにしています。疲れが強かった日も同じで、水分だけでなく食事・睡眠・暑さ・行動の負荷まで振り返らないと原因は絞れません。記録は、飲み物の量だけでなく、自分の体の癖を知る道具になっています。
私が実際に持っていく量(日帰り・低山〜中級山岳の場合)
最近の私の山行は日帰りが中心です。その前提で私が持っていく量は、山にもよりますがだいたい夏が合計2L、冬が合計1.5L。夏の内訳は、予備の水500mLを水筒に、麦茶を冷凍兼用のペットボトル2本(どちらも凍らせます)、それにアミノバイタル(クエン酸チャージ ウォーターの粉末を500mLの水に溶かした物)を1本です。本当に暑い日だけは、アミノバイタルを2本(1L)に増やして合計2.5Lにします。凍らせるのは麦茶だけで、アミノバイタルは凍らせません。冬は麦茶のペットボトルが1本に減り、もう1本のぶんが温かい麦茶を入れた保温ボトルに替わります。それに水筒の水500mLで合計1.5L。歩きながら飲む分(夏はペットボトル2本、冬はペットボトルと保温ボトル)はサイドポケットへ、予備の水筒はザックの中へ。酷暑の予報が出ている日は、アミノバイタルの1本を経口補水液に替えます。予備の水筒の水は緊急用も兼ねているので、絶対に減らしません。
飲み物は1Lで約1kg。夏は約2kg、本当に暑い日は2.5kg、冬でも1.5kgを背負って登ることになります。ザックの容量と重さの余裕は、飲み物の分だけ最初から見込んでおく必要があります。飲み物を2kg以上足しても余裕がある30Lのザックに、私は結果的に助けられています。ザック容量の考え方はこちらの記事で詳しく書いています。下のカードからどうぞ。

こまめに飲む|飲みかけペットボトルの注意点

飲み方の基本はこまめに、少しずつです。ファイントラックの解説では「30分に一回、100〜200mL」を、のどの渇きを覚えないように小刻みに、とされています。一度にまとめて飲むと吸収しきれず無駄になる可能性がある、という説明です。数字はノルマではなく、まとめ飲みにしないための目安として使ってください。
喉が渇いたと感じた時点で、脱水は始まっています。だから「渇く前に飲む」。それには飲む動作が面倒であってはいけません。私がペットボトルとサイドポケットにこだわるのは、そのためです。
歩き始める前の一口も効きます。登山口でザックを背負う前にひと口飲んでおくと、体に水分が入った状態でスタートできます。ペットボトルは残量が目で見えるので、休憩のたびに残りを確認するのも簡単です。
そして、ここが大事なところです。行程の前半で飲み物の半分以上を使ってしまったら、残りの所要時間と、確実に補給できる場所を確認してください。足りない見込みなら、引き返す・行程を短くする判断が要ります。残量に合わせて飲むペースを落とすのは、暑さや運動負荷で消費が増えている場面では体を悪いほうへ追い込みます。減らすのは水ではなく、歩く距離です。逆に、ラストスパートのように後半でペースを上げて早く下りる手もありますが、下山時がいちばん事故の起きやすい場面なので、おすすめしません。できるだけペースを乱さずに歩くのが基本です。
飲みかけのペットボトルは、夏ほど気をつける
有名な話ですが、口をつけて直接飲んだペットボトルの中では、口の中の細菌がボトルに移って繁殖します。宇都宮市衛生環境試験所の実験では、直接口をつけて飲んだ麦茶を30℃に置いたところ、1mLあたりの菌数が24時間後に約9,000個、48時間後には3万個を超えました。原料の大麦に炭水化物が比較的多いためと考えられていて、緑茶が逆に減ったのと対照的です。
同じ実験でミルクコーヒーは24時間で1,000万個に達していて、麦茶はそこまでではありません。それでも増える側の飲み物であることは間違いありません。
一方、エフコープの商品検査センターの検証では、10℃保存なら菌の増殖はほとんど見られなかったそうです(対象は玄米茶と水で、麦茶は含まれていません)。つまり温度と時間が増殖の条件。夏のサイドポケットは直射日光が当たって温度が上がりやすい場所なので、条件としては良くありません。
私がやっているのは、次の3つです。
①その日のうちに飲む前提で持っていく
②残った分は量を記録して、家に帰ったその日のうちに飲み切る(翌日の山には持ち越さない)
③夏は保冷カバーで温度上昇を抑える
ただし「その日のうちなら大丈夫」と言い切れるわけでもありません。口をつけたものは早めに飲む、長時間高温になったものは当日中でも飲まない。この2つで考えてください。翌日の山に持ち越さないのは、冷蔵が増殖を抑える助けになるのは確かでも、玄米茶と水の実験から自家製麦茶の翌日携行の安全性までは言えないからです。
飲み物以外の日帰り装備は、全装備リストとしてこちらの記事にまとめています。下のカードからどうぞ。

登山の飲み物のよくある質問

水と麦茶、どちらがいいですか?
水分補給という機能では、どちらでも構いません。私が麦茶を選ぶいちばんの理由は飲み慣れているからで、ほんのり味があるほうが口に運ぶ回数が増える、というのもあります。水のほうが飲みやすい人は水で問題ありません。どちらも、汗を多くかく日は塩分を別に補うことを忘れないようにしてください。
経口補水液やスポーツドリンクは持っていくべきですか?
大量に汗をかく場面では、環境省のマニュアルが0.1〜0.2%程度の塩分を含む飲料を勧めています。麦茶だけで通すなら、塩分は塩タブレットや行動食で補うことになります。私は酷暑の予報が出ている日だけ、経口補水液を念のため持っていきます(アミノバイタルの1本と交換する形で、予備の水は減らしません)。ただし経口補水液は、脱水のときなど製品に表示された用途で飲む物で、普段の給水用ではありません。暑い日に長く歩く予定なら、スポーツドリンクのような塩分の入った飲料を1本混ぜておくのも手です。
スポーツドリンクだけではだめですか?
だめではありません。塩分と糖分が最初から入っているぶん、麦茶より楽な面もあります。ただ甘さで喉が渇く感じがして飲む量が減る人や、糖分の摂りすぎが気になる人は、麦茶や水と組み合わせると飲みやすくなります。私自身はスポーツドリンクが苦手で、ほぼ持っていきません。夏のアミノバイタル(粉末のクエン酸チャージ ウォーターを水に溶かした物)だけは別で、基本は1本、本当に暑い日は2本持ちます。甘さが控えめで後味がすっきりしているので、スポーツドリンクの甘さが苦手な私でも抵抗なく飲めます。同じタイプの人にはおすすめです。
冬は何を飲めばいいですか?
冬も、量は季節だけでなく行動の負荷と汗のかき方で決めます。汗が減るぶん必要量は下がりやすいものの、乾燥した空気で呼吸からも水分が抜けるため、ゼロにはなりません。私は冬も合計1.5Lで、麦茶のペットボトル1本+温かい麦茶の保温ボトル+水筒の水500mL。夏に2本持つ麦茶のペットボトルの1本を、冬は保温ボトルに替える形で、予備の水の水筒とは別の1本。保温ボトルもサイドポケットに差して、歩きながら飲みます。氷点下では中身や飲み口が凍って飲めなくなることがあるので、ザックの中や懐に入れる、保温ボトルを使うなど、凍らせない工夫が要ります。
2Lペットボトル1本と500mL4本、どちらがいいですか?
すぐ飲むボトルと予備の水を分けて考えるのが先です。そのうえで、行動中に飲む麦茶は、サイドポケットに入るサイズのペットボトルを複数本にしています。
①サイドポケットに入るので歩きながら飲める
②左右に分けて入れるとザックの重心が偏らない
③飲み終えた本数で残量が一目で分かる
予備を大きい容器にまとめて、休憩のたびに手元のボトルへ移す方法もあります。自分のザックのポケットに何本収まるかで決めてください。
凍らせたペットボトルが溶けなくて飲めません
夏でも、カチカチに凍らせたボトルは最初の1〜2時間ほとんど飲めないことがあります。私の対策は、6〜7割だけ凍らせておいて、当日に麦茶を注ぎ足すこと。最初から飲めるうえ、氷が溶けるあいだ冷たさも続きます。もっと手軽なのは、凍らせないボトルを1本用意しておくことです。半解凍を狙って前夜から出しておく方法は、室温や容量で溶け方が変わるため当てになりません。保冷カバーに入れると溶けるのがさらに遅くなるので、その分も見込んでおいてください。当日、山で凍ったまま飲めないときは、カバーから出して日なたに置くか、手で握って温めると早く溶けます。溶けるまでは、凍らせていないボトルや予備の水でしのいでください。
炭酸飲料を持っていってもいいですか?
行動中の飲み物にはおすすめしません。歩いて振られたあとに開けると吹き出しますし、一気に飲めないのでこまめな補給に向きません。ただ、頂上で飲む炭酸は最高です。それが目的なら、行動用とは別に1本持っていくのはありだと思います。飲むなら下山後に買うのもいいですね。夏の車内は高温になり容器が変形・破損する恐れがあるので、置きっぱなしにはしないでください。
ハイドレーションのほうが楽ではないですか?
歩きながら飲む楽さだけなら、ホースで飲めるハイドレーションのほうが上です。私も対応ザックを持っていますが使っていません。いちばんの理由は手入れの面倒が増えることで、カビが出たらその時点で使えなくなります。次が残量が見えないこと。確かめるためにザックを下ろすのでは本末転倒だと思っています。独特のゴム臭というかプラスチック臭も、私には合いませんでした。この話は別の記事で詳しく書く予定です。
沸かした麦茶はどれくらい日持ちしますか?
家庭で作った麦茶は、煮沸していても長く置ける飲み物ではありません。煮出しなら冷蔵で3日程度、水出しなら当日から翌日まで、と案内するメーカーもあり、作り方でも変わるので一律の期限にはできません。使った商品の案内に従い、清潔な容器で冷蔵して早めに飲み切ってください。私の場合、凍らせた分は冷凍庫にストックしてあり、当日に家の麦茶を注ぎ足して持っていき、その日のうちに飲むようにしています。
まとめ:麦茶をペットボトルで、少し多めに
まとめ【登山の飲み物のまとめ】
- 飲み物は自宅で沸かした麦茶。家でいつも作っていて飲み慣れているが、塩分はほぼゼロ。塩タブレットなどで別に補い、塩分なしで飲みすぎない
- 容器はペットボトル。水筒は飲むのにワンテンポかかり、広口でこぼしやすかった。歩きながら飲まない予備の水だけは今も水筒
- 置き場所は麦茶がサイドポケット、予備の水500mLは水筒でザックの中の背中側・上寄り
- 夏は凍らせた麦茶+保冷ペットボトルカバー。冷凍兼用ボトルを6〜7割だけ凍らせて当日に注ぎ足すと最初から飲める(使い捨て容器の再利用は自己責任で)
- 量は体重×行動時間×5mL×0.7〜0.8で行動中の給水量を出し、補給地点を確かめたうえで予備を足して携行量を決める。私は夏が合計2L(水筒の水500mL+麦茶2本+アミノバイタル1本)、冬が合計1.5L(麦茶1本+温かい麦茶の保温ボトル+水500mL)
- 飲みかけは早めに飲む。高温になったものは当日中でも飲まない
飲み物は、自分の給水量をつかむまではベストな量が分からず、準備でいちばん苦戦する装備だと思います。月に何度か登る人なら、この記事で書いた記録の方法を続けるだけで、自分が持っていく量が見えてきて、準備がずっと楽になります。目安式はザックの重さで多少前後しますし、水分を摂る量は個人差も大きいところ。どの山で、どんなコンディションで、どれだけ持ち帰ったかを把握するだけでも、次の量を決めるのが楽になるので、ぜひ試してみてください。
私の形は麦茶とペットボトルとサイドポケット、そして少し多めの本数。持って帰る分には荷物が少し重いくらいで済みますが、途中で足りなくなるようなぴったりの量は危険です。真似してもらってもいいですし、記録をつけながら自分の形を探すのも、山の楽しみのひとつだと思っています。
▼麦茶の弱点(塩分)をちょうど補ってくれる、私の夏の1本はこちら
Enjoy the mountains!



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